近年、家族葬で故人を送る方があなたの周りにも増えてきたのではないでしょうか。いざ自分が家族葬の主催や参列をするとなると、最近一般的になって来た形式のため何かと戸惑うこともあるでしょう。今回は家族葬の流れやマナーを中心に、最近増えてきた一日葬についても解説いたします。

葬儀・告別式の前夜に行う通夜

通夜は、故人の親近者だけが参列する儀式です。葬儀・告別式の前夜に執り行うことで、邪霊の侵入を防ぐとされています。僧侶が読経をし、参列者は焼香をあげます。その後もご遺族は夜通し線香やろうそくを灯し続け、故人と過ごす最後の夜です。

お通夜は故人が亡くなった翌日に行われることが一般的です。通夜の翌日に葬儀・告別式が行われ、故人の関係者が幅広く参列します。

最近増えてきた家族葬

家族葬が増えてきたのは最近のことです。
一般的な葬儀(一般葬)とはどのような点が違うのでしょうか。ここからは家族葬について解説します。

①家族葬とは

家族葬とは、親族や生前に親交が深かった方のみで執り行う小規模な葬儀形式のことをいいます。参列者は1〜30名ほどになる場合が多いといえるでしょう。参列者が少ない分、故人との時間を落ち着いて過ごし見送れることが特徴です。
じつは、家族葬に明確な定義はありません。そのため参列者をどこまで呼ぶかは、故人や遺族の意志次第です。
僧侶に読経を依頼する点に関しては、一般葬と同様に行われます。

②家族葬が増えた背景

家族葬増加の理由には、3つの時代背景があります。

  • 就職や結婚などで故郷を離れる人の増加

地域コミュニティの形は変化し、現代ではご近所同士のつながりは減少傾向にあります。葬儀のような急なできごとに大勢が集まることも少なくなり、家族葬の需要が高まったと考えられます。

  • 少子高齢化

兄弟が少ないとその分1人あたりの負担額は増加します。家族葬の増加には経済的な理由もあるといえます。

  • 新型コロナウイルスの影響

感染拡大予防のため、少人数で執り行える家族葬を選ぶ流れが起きました。

家族葬での通夜の流れ

基本的には一般葬と同じ流れです。

  • 事前準備

式場へは開式の約1時間半前に到着し、故人へのお参りや祭壇の確認をします。

  • 受付

開式の約1時間前から始め、参列者が到着された順に行います。挨拶をし、お名前を確認、お香典を受け取ります。受付が済んだ方は控室でお待ちいただきましょう。

  • 開式

喪主が開式の挨拶をし、僧侶が読経し焼香をあげます。その後の焼香は多くの場合、喪主・親族・親近者の順番です。僧侶が法話をし退場されたら、喪主が挨拶と通夜振る舞い・翌日の告別式のご案内をします。

  • 通夜振る舞い

式後は通夜振る舞いという会食をすることが一般的です。家族葬では省略されることも多く、お食事代わりに返礼品やお弁当をお渡しする場合もあります。

家族葬での通夜のマナー

家族葬で気をつけるべきことは何なのでしょうか。参列者側と遺族側それぞれのマナーについて解説します。

①参列者側

家族葬では、誰が参列するのかを故人や遺族の意向で決めています。遺族がまだ訃報連絡をしていない方がいる可能性があります。葬儀への参列をお願いされたことはなるべく口外しないよう配慮しましょう。

それ以外は通常の通夜と同じであるため、基本的なマナーを確認しておきましょう。
香典の相場は、故人との関係性によって違います。

両親は5〜10万円・兄弟姉妹は3〜5万円・祖父母は1〜5万円・おじおばは1〜3万円です(配偶者の親族の場合も同様です)。
友人は3000円〜5000円が相場ですが、親しい友人に関しては5000円〜1万円が相場とされています。

言葉遣いも気をつけなければなりません。
「浮かばれない・消える」などの忌み言葉、「ますます・次々」などの重ね言葉、「生存中・死亡」など死を連想させる直接的な表現は避けましょう。

②遺族側

通夜の中で最初に焼香や献花をする人は遺族です。宗派の作法を事前に確認しておくことで式中は落ち着いて故人を偲べるでしょう。

喪主は挨拶をする場面がいくつかあります。各場面における例文をインターネットや書籍などで事前に調べるか葬儀社に確認し、挨拶文を準備しておくことがおすすめです。挨拶の際には参列者に謝意もお伝えします。

僧侶へのおもてなしも忘れずにしましょう。お布施の用意は事前にしておきます。

家族葬の通夜に参列する際の服装マナー

家族葬に参列する際は、どのような服装を選べばよいのでしょうか。
参列者・ご遺族・子どもの服装について解説します。

①参列者の服装

基本的には一般葬と同じです。
通夜への参列は略喪服(平服)でもかまいません。「訃報を聞き、取り急ぎ駆けつけた」という意味合いがあるためです。つまりグレーや紺色のスーツやワンピースもマナー違反ではありません。ただし、最も無難な服装はブラックスーツです。女性ならブラックフォーマルです。無地で光沢のないものを選びましょう。
靴・靴下・ストッキング・バッグ・ベルトは黒で統一します。ハンカチは白か黒です。アクセサリーはパールと結婚指輪のみです。

②遺族の服装

遺族の服装も一般葬と同じです。
喪主・故人に近い親族は正喪服を着用します。喪主以外の親族は、準喪服も一般的です。
正喪服とは、最も格式の高い服装です。男性ならモーニングか黒紋付き羽織袴を着用します。女性なら黒無地染め抜き五つ紋付き着物かブラックフォーマルです。シルクやウールなど上質な素材で作られた、無地で光沢のないものを選びます。
準喪服は正喪服に続く格式ある正装です。男性ならブラックスーツ、女性なら生地に高級素材が使用されていないブラックフォーマルを選びます。男女ともに無地で光沢のないものにしましょう。

③子どもの服装

子どもの服装に格式はありませんが、マナーは存在します。

幼稚園児や小中高生で制服があれば制服を着用します。
制服がない場合は、制服のような服装をイメージすると用意しやすいのではないでしょうか。白いシャツやブラウスに、黒・紺・グレーのズボンやスカートを合わせます。その上から同系色のジャケットやカーディガンを羽織ります。女児はワンピースでも構いません。
多くの場合で制服のない大学生は、喪服を用意した方がよいでしょう。

同じく制服を持っていない乳児は、無地の落ち着いた色味であれば、黒でなくてもかまいません。

子どもであっても肌の露出は控え、短いスカート丈やくるぶし丈の靴下はNGです。

通夜を行わない「一日葬」も増加傾向

最近では一日葬も増えてきました。
参列者にご年配の方や遠方にお住まいの方が多い場合、身体的にも時間的にも負担が軽くなる一日葬もおすすめです。一日葬とはどのような形式なのでしょうか。

①一日葬とは

通夜をせず、告別式と火葬を1日で行う葬儀のことを一日葬といいます。

1日で済ませられる分、遺族の精神面や身体面での負担が軽減できることがメリットです。
家族葬と一日葬はどちらも最近増えてきた形式のため混合しやすいかもしれませんが、それぞれの特徴は以下のように異なります。
一日葬では一般葬と同様に参列者に制限を設けていません。一方、家族葬では親近者のみが参列します。形式に関しては、一日葬は簡略化されていますが、家族葬は簡略化されておらず一般葬と同様に執り行います。

②一日葬の相場は130万円~

通夜を省略する分、葬儀にかかる費用は抑えられる傾向にあります。
一般葬では合計240万円ほどが相場なのに対し、一日葬では130万円ほどに抑えられます。内訳の目安は以下の通りです。

  • 葬儀社に支払う金額の相場は、30万円から50万円(葬儀前日にご遺体を会場に運び入れる場合、2日分の会場費が必要な葬儀社もあります)
  • お布施は10万円から30万円程度
  • 会葬礼品や食事代は参列人数次第で異なる

まとめ

いかがでしたか。
故人・遺族の意向や負担に配慮して葬儀形式を選べる時代になりました。

親近者のみの家族葬でも形式を簡略化した一日葬でもマナーに特に違いはありません。従来通りのマナーを意識しながら、故人との最期の時間を心穏やかに過ごしましょう。