葬儀や法要は、誰もが参列する可能性のあるものです。しかし、葬式に関するマナーを実践する機会は、そう多くありません。そのマナーというと、全てを把握している人の方が少ないのではないでしょうか。
この記事では葬式でのマナーとはどのようなものか、大きく6つに分けて紹介します。

葬儀と法要の違い|お別れとご供養

葬式とは、いくつかの儀式の総称です。
「お通夜」は、線香の火が消えないよう、遺族が灯し続けることで、告別式の前日の夜に行われます。
「告別式」は出棺前、故人に別れを告げる儀式のことで、「火葬」はご遺体を焼き、骨壺へご遺骨を納めることです。
これらの一連の儀式をして「葬式」と呼びます。故人に対し、あの世での幸せを祈ったり、最期の別れをしたりします。
また、グリーフケア(故人の死を受け入れるまでの過程のこと)や、衛生的措置(病原菌の繁殖などを抑えるため)などの理由もあるのです。

対して法要とは、僧侶が経を読む儀式のこと自体を指します。
そのため故人が亡くなった後、定期的に行われる法要や、その際集まった人々で食事を取ることを「法事」といいます。

葬儀法要のマナー6選

遺族、参列者ともに喪服の着用がマナーです。
男性は和装かモーニングが本来の喪服ですが、礼服として使えるブラックスーツでもかまいません。
女性は和装が正式でありましたが、近年ではブラックフォーマルが、用いられることも多いです。
喪服として着用される礼服は、普通のスーツとはどのような違いがあるのでしょうか。

①服装

葬式に参列する際の服装は、基本的にフォーマルなものに統一しましょう。
男女別の詳細は以下で説明しますが、子どもの場合制服があれば制服を着ます。
無い場合、もしくはもっと小さい子どもの場合、黒や白などの落ち着いた色合いの服で揃えます。

男性はできるだけスーツ・ネクタイ・靴・靴下を黒、ワイシャツは白で揃えるのがよいでしょう。
女性はワンピース(スーツ)・靴・かばん・ストッキングを黒、ハンカチは黒か白にします。アクセサリーは基本的に結婚指輪以外付けません。付けたい場合イヤリングは、揺れない一粒状のダイヤ、ネックレスは真珠の一連(二連のものは死が連鎖するという意味合いで縁起が悪いといわれています)にしましょう。

参列者の服装

参列人数によっては、多少カジュアルなものでもかまいませんが、どのくらいの規模か分からない場合、喪主や業者に尋ねてみましょう。

ご遺族の服装

男性の喪主の方は、モーニングを着用する場合があります。
モーニングは昼間しか着用できないため、通夜や告別式が夕方以降に行われる際は、違う礼服を準備しましょう。
遺族の女性の方で和装をする際、長襦袢・半襟・足袋は白に統一し、それ以外はできるだけ黒に揃えます。

②焼香

焼香には、宗派によって決まった動作があります。
仏事の場合、以下のように行います(座ったまま行う場合も同様)。
普段のお参りでの作法とはまた違うため、各場面で必要な作法を覚えておくと、よいかもしれません。

  1. 焼香台前で遺族・僧侶へ一礼し、焼香台へ向き直る。
  2. 前に進み、一礼し、数珠を取り出す。
  3. 左手に数珠を引っかける(親指と人差し指の間に持つ)。
  4. 抹香を右手の指先で少量つまむ。額の前まで持ってくる。
  5. 香炉の中へ入れる。
  6. 両手を合わせ、合掌する(数珠は両手に通す)。
  7. 少し下がり、遺族へ一礼する。

③香典

香典は、不祝儀袋に包みます。故人との関係性によって金額が変わりますが、一般的に身内の場合、1万円~10万円が目安といわれています。その際注意すべき点は、お札が新札かどうかです。
香典として新札を渡すことは不幸ごとを待っていたかのように準備していた、と考えられ失礼に当たるため、新札は入れないようにしましょう。
新札しか無い場合は、あえて折り目をしっかり付けます。

葬儀の際に渡す封筒の名前や表書きには、薄墨(うすずみ)を使います。これは「墨に涙が滲むほど悲しい」といった意味合いを含ませています。
宗派ごとに表書きなどが異なりますが、宗派がわからない場合は、「御霊前」と書くとよいでしょう。

④数珠

参列する際、数珠は1人に1つ用意するとよいでしょう。男女で使っている玉のサイズが違うため、気をつけましょう。
数珠の持ち方には、宗旨宗派で決まりがありますが、略式のものが万能に使えます。
自分の宗派の正式な数珠であれば、他宗派の葬儀で使用しても、問題ありません。

⑤出棺

告別式の後は、火葬場へ向けて出棺します。
同行するのは身内や、故人とつながりの深かった人です。そのため、参列者は棺の中に生花を入れて、最期のお別れをします。
生花だけでなく、故人が好きだったものを入れることも可能です。ただし、燃えにくいものは入れられないため、事前に業者へ確認しましょう。
霊柩車の出発後、一礼と合掌で見送ります。その姿が無くなるまで続けて、その後すぐに話し出すのはマナー違反です。
また、出棺の見送りが終わるまでは、礼服でいることもマナーであるため、寒いときでも上着は脱ぎます。中に着込んだり、カイロを貼ったりして、暖かくしておきましょう。

⑥拾骨

火葬後に拾骨(骨上げ)という、骨を骨壺に入れる儀式があります。
順番は喪主を始め、故人との関係が深い人からです。足下から体の中心部、頭へと生前の形に添うように、長い箸で掴み中に入れます。
最後に喉仏を喪主が納めて終了です。しかし、入れる骨の部位や量、作法などは、地域によって様々です。
火葬場の人が順番に指示を出してくれます。その場の指示に従うとよいでしょう。

葬儀法要での注意事項

葬儀中のマナーはたくさんあります。
会食の挨拶や、弔意を伝えたい場合、言葉にしてもよいものと、忌み言葉として避けるべきものがあります。その一部を紹介します。

できるだけ精進落としに参加する

法要の後には、「精進落とし」という会食を行います。その際の席順は、上座の僧侶から仕事関係者・親しい友人・親族の順に座り、喪主・遺族は末席と決まっています。
会食の開始とともに、喪主は挨拶をします。

無理にご遺族に声かけしない

ご遺族に何か、お悔やみの言葉を掛けたいこともあるでしょう。しかし宗派によっては、してはいけない言い回しがあります。
例えば仏教では「ご冥福をお祈りします」と伝えますが、神道やキリスト教では、考えに違いがあるため、使ってはいけない言葉なのです。
浄土真宗では「お悔やみ申し上げます」や、キリスト教では「安らかな眠りを、お祈りいたします」の様に、違う表現をするため、事前に調べるとよいでしょう。

〈挨拶や会話での注意点〉

  • 「再三」「つぎつぎ」「度々」「重ね重ね」などの繰り返し言葉
  • 「死亡」「死ぬ」「事故死」 → 「ご逝去」「他界」「突然の不幸」
  • 「四」「九」の不吉な数字
  • 大きな声での会話

参列前に宗派を調べておく

宗派に関して、どの程度知識がありますか?幼い頃は見よう見まねでしていたことも、大人になり「こんなことにもマナーがあったのか」と、知ることもあるでしょう。
身内で参列する際にはなんとかなるかもしれません。しかし、会社関係などの公の葬式に参列する際、仕事仲間に迷惑を掛けないために、他宗派のマナーは調べていくとよいでしょう。

通夜か告別式のどちらかでご香典をお渡しする

用意した香典は、通夜か告別式で必ず渡しましょう。しかし、喪主から「香典辞退」と言われた場合、何か理由があっての辞退であることを考慮し、渡すことは避けましょう。
無理に渡すことは相手の負担になる可能性があります。

お供え物は参列者で分けられるものを選ぶ

解散する前に、全員からのお供え物を、参列者へと取り分けます。
大人数で分ける場合が多いため、個包装のものがよいでしょう。
お供え物は飲み物、焼き菓子やクッキーなど日持ちのよいものを選びます。

まとめ

マナーは古い風習に則ったものである場合が多い傾向にありますが、時代に合わせて簡略化され、変わってきています。しかし、どれもこれも現代に合わせる必要はありません。なぜなら、マナーの元となった謂われは、決して無駄なものではないからです。