近年、故人とのお別れの方法として直葬と呼ばれる形式が選択されるご家庭も増えています。ご家族の、時間や費用軽減が可能な一方で、簡略化されすぎることへのご不安から親戚内でのトラブルが発生することも起こりかねません。直送の流れやマナーを事前に知っておくと、起こりうるトラブルや後悔を避けてお見送りができるでしょう。

直葬とは火葬だけで弔う葬式のこと

直葬とは、ご逝去場所から火葬場へ直接お送りし、お通夜や告別式をせず、火葬のみを行う葬儀形式です。一般的な葬儀では、お通夜、告別式の後に火葬を執り行いますが、直葬はその流れが省略されます。そのため、他の葬儀ではお見送りまで数日ほどの時間を要しますが、直葬の場合は数時間から一日程度でのお見送りです。近しい家族や親族のみの参列者がほとんどで、他の葬儀と比べて少人数でのお見送りとなる特徴があります。

家族葬との違いは一部の儀礼が省略されること

直葬と同じように小規模な葬儀の形式として家族葬があります。直葬、家族葬どちらも共通している点は、故人と近しい方が少人数で参列する点です。家族葬では「お通夜」「告別式」が執り行われるのに対し、直葬では省略されるのが異なる点といえます。

一般的な葬儀費用には下記のものが含まれています。

  • 葬儀会場費用
  • 祭壇、葬具にかかる費用
  • 参列者へのおもてなし(飲食代)
  • 寺院への支払い(読経料・お布施など)

家族葬では、参列者が一般的な葬儀より少ないため、会場費、参列者へのおもてなしにかかる費用を抑えられるでしょう。お通夜、告別式を執り行わない直葬はさらに経済的負担を減らせます。

直葬の流れ

ご逝去後、直葬を執り行い、故人をお見送りするまでの流れを説明します。

  1. 葬儀会社へ連絡を取り、契約する
  2. 24時間安置する

亡くなってから24時間は火葬・土葬が不可であると法律で定められているため、直葬でも丸1日の安置が必要です。

  1. 当日、故人を納棺する
  2. 参列者と故人のお別れ後出棺する
  3. 火葬を執り行う

参列者が火葬場へ到着後すぐに火葬されるのが基本的な流れです。

  1. 参列者による骨上げをする

自治体への死亡届の提出、火葬許可証の取得は2と3の間にしていただくことが一般的です。

葬儀会社のプランに応じて、読経、焼香などの宗教的儀式を希望する場合は5の前に火葬場にて行える場合もあります。

直葬のメリット・デメリット

直葬を選択する場合、以下の点がメリットといえるでしょう。

  • 費用を抑えられる
  • 短期間でお見送りができる
  • 近しい家族、親戚だけでお見送りができる

費用や時間の不安を軽減し、落ち着いてお見送りいただける点がメリットと考えられます。

一方、デメリットとなりうる点は下記のようなものです。

  • 宗教的儀式省略のため、寺院より納骨、戒名授与を断られる場合がある
  • 親族が直葬に反対する可能性がある
  • 後々、お通夜や告別式を執り行えばよかったと不満が残りうる

一度きりのことであるため、深い後悔が残ることも懸念されます。

直葬で後悔しないためのポイント

葬儀は故人を見送り、同時に残された人が気持ちに区切りをつける儀式です。直葬では個人を落ち着いてお見送りできる反面、悔いが残る懸念もあります。デメリットとなりうる点を確認し、それぞれに納得し直葬を選択できるとよいでしょう。

お墓に納骨したいときは住職と話し合う

宗教的儀式が省略される直葬を選択した場合、寺院より戒名授与や納骨を断られることがあります。直葬後にお墓を建てる場合には、直葬でも納骨可能な墓地を探すとよいでしょう。例えば、多くの宗教を問わない墓地では、直葬を選んでも納骨が可能です。すでに納骨を希望するお墓がある場合、直葬を選択する前に寺院へ相談しましょう。直葬を選んだ場合でも、例えば寺院によっては、四十九日の法要をすることで納骨が可能とされます。

周りに直葬の理解を得る

故人、喪主が直葬を希望する場合でも、他のご家族やご親族にはお通夜や告別式を執り行ってのお見送りを望まれる方もいます。ゆっくりと時間をかけてのお見送りを希望する方には、直葬はあまりにも短時間に思われてしまうでしょう。また直葬後に訃報を知り、お別れができなかったことを残念がる方がいる可能性もあります。

  • 直葬についてご親族へ説明し、納得いただく
  • 個人と親しかった方へ速やかに連絡し、お別れの時間を持っていただく

などの形で、納得してお別れができるようにするとよいでしょう。

火葬後の後飾りをする

直葬では生前の礼を十分に伝えきれなかったと感じる場合は、火葬後、後飾り祭壇を設置することも検討するとよいでしょう。後飾り祭壇は、ご自宅用の祭壇で49日までの期間に利用されます。遺影を置き、その前にお花を飾り、お線香をあげられるよう準備するのが一般的です。直葬に参加できなかったご親族、ご近所の方などにもお別れに来ていただける方法といえます。

直葬のマナー

一般葬、家族葬と異なるスタイルといえる直葬には、直葬ならではのマナーが存在します。喪主側、参列側それぞれの側面より紹介します。

服装は準喪服で参列する

火葬場で、近しい少人数の親族でお見送りをするのが家族葬です。一般葬や家族葬と比べると服装を気遣う必要はありません。しかし、やはり葬儀であることには変わりないので、ビジネススーツやカジュアルな服装ではなく、純喪服を着用するほうがよいでしょう。

  • 男性向け純喪服例

ブラックスーツと白無地のワイシャツ、黒無地のネクタイ

  • 女性向け純喪服例

黒のワンピースやスーツ
黒のストッキングの着用が好ましい

喪主はいなくてもよい

直葬にはお通夜、告別式がないため、喪主のあいさつもありません。そのため喪主を立てなくても直葬実施に問題はないでしょう。一方、葬儀の主催者である施主は必要です。施主は葬儀費用の支払い、寺院への支払いなど金銭的やり取りを担当します。喪主を立てない場合には、施主が葬儀内容の相談、契約なども担当するケースが多く見られます。

一般的に食事の場は設けていない

一般葬では、通夜ぶるまいや精進落としなど、食事の場を設けることが一般的です。直葬では通夜、告別式がないため、同様にこれらの会食の場も設けられません。食事時を挟んで直葬に参列する際は、食事を済ませてから参列するほうがよいでしょう。

直葬において香典は不要

直葬は、遺族が葬儀に十分な手間や時間をかけられないため選択されることがあります。香典を受け取ると、その管理や香典返しなどが発生するでしょう。費用を抑えられる直葬では、香典を渡すことで遺族の負担を増やすことも懸念されます。

香典が不要である、と多くの場合遺族より連絡があるため、それに準ずるのがよいでしょう。

渡したい場合の香典の相場

不要であるといっても、香典は故人に対する想いを示す意味合いも持ちます。強く弔意を示すために香典を渡す場合は、遺族に対してお悔やみを告げるときに渡すとよいでしょう。金額の相場は、身内の場合1万円から5万円、友人、会社関係者の場合には3千円から5千円ほどが目安です。香典は、新札を準備するのではなく適度に折り目のついた紙幣を香典袋に入れて準備しましょう。

直葬での香典にも返礼品が必要

香典を受け取ると遺族は香典返しが必要です。香典返しの時期は、多くは四十九日の法要後1か月以内ですが、地域や宗派などで違いが見られます。香典返しの相場は、香典の3分の1から半分の金額です。お茶やコーヒーなどのすぐに消費するものや、タオルなどを送ることが多いでしょう。香典返しを当日に行わない場合には、香典をいただいた方の好みに合わせたものを贈ることもあります。

まとめ

近年では個人をお見送りする形式も多様化しています。直葬もその1つで、費用や時間を抑え、遺族が落ち着いて故人とお別れができる葬儀といえるでしょう。一般葬、家族葬との違いを知り、家族間や寺院と事前に相談することで不本意なトラブルを避けられます。葬儀会社のホームページを見たり、一度お電話などで相談したりすることで情報収集するとよいでしょう。