葬儀の種類が多様化する最近「家族葬」がその選択肢に入ることも増えてきました。家族葬とは、その名の通り家族や親族のみで行う葬儀のことです。今回はその家族葬を行う際の葬儀社の選び方と選ぶタイミングについて解説いたします。

葬儀社を決めるタイミング

葬儀を行うにあたり、最初に決めねばいけないものが葬儀社です。葬儀社を決めるタイミングは大きく分けると「生前にご本人様が」か「ご逝去後にご遺族様が」のどちらかです。ここではそのタイミングについて解説します。

ご逝去した後の搬送前

ご逝去後に葬儀社を決める場合、最初のそのタイミングはご遺体を安置施設へ搬送する前です。しかし、近しい方がお亡くなりになると誰しも冷静さを欠き、適切な判断を下すことは容易ではありません。また、ご遺体は速やかに搬送されねばなりません。そのため、葬儀社をじっくりと吟味する時間的余裕も精神的余裕もなく、病院が紹介する葬儀社に即決してしまうケースがあります。なお、残念ながらこういったご遺族の状況を利用して内兜を見透かすような葬儀社もあります。

ご逝去した後の搬送後

ご逝去後に葬儀社を決める際の次のタイミングは、ご遺体を安置施設に搬送した後です。ご遺体の搬送と葬儀を執り行う会社は同じであることが一般的ですが、搬送のみを依頼することも可能です。通夜・葬儀はできるだけ速やかに行うことが原則です。そのため、ゆっくりはしていられませんが、搬送前より余裕があります。

ご本人様の生前

昔は生きているうちに死後のことを決めるなんて縁起が悪いと言われてきましたが、最近では「終活」という言葉も浸透してきました。葬儀について決めておくことは終活の大きなトピックの1つです。ご本人様の生前に葬儀の詳細を決めるメリットは、ご本人様の希望通りの葬儀が行えることです。また、近しい方がお亡くなりになった際の悲しみは耐え難いものです。そのような中、慣れない葬儀について決めることは残されたご家族に大きな負担となるでしょう。事前の相談でご家族の負担も軽減されます。なお、ご生前の契約で割引などの特典がある葬儀社もあります。

葬儀社を選ぶ前の確認事項

葬儀を行う上で大切なことは、どのような葬儀にしたいかを明確にすることです。低予算で行いたい、多くの人に来てほしい、心のこもったあたたかい式にしたい。重要視する点は人によって異なります。希望する葬儀にできるだけ近づけるためには、いくつかの事項を事前に確認・決定することが大切です。

宗派または宗旨

日本人の大半は無宗教ですが、執り行われる葬儀は仏式がほとんどです。しかし、仏教と一口に言っても宗派がいくつかあり、葬儀の形式はその宗派によって多少異なります。

また、菩提寺がある場合、そちらに相談することをおすすめします。菩提寺とは、先祖代々のお墓があるお寺のことです。菩提寺の有無が分からないときは、親戚のご高齢の方や本家に確認するとよいでしょう。

規模と予算

葬儀を行う際に重要なことは、規模と予算を決めることです。最初にいくらまで出せるという予算の上限を決めましょう。葬儀にかかる費用は基本となるプランの料金に加えて飲食費や御布施代などがあります。特に飲食や返礼品にかかる金額は参列者の人数によって変動します。そうすると予算内で何人程度であれば葬儀を知らせられるのかもおのずと決まってくるはずです。その点、家族葬であれば参列者がある程度決まっているため、どの範囲まで葬儀を知らせるかはあまり悩まなくてよいでしょう。

葬儀社の種類

葬儀を執り行う葬儀社にもいくつか種類があります。ご希望の条件や内容にあった葬儀社を選べるようにするには、それぞれの特徴をしっかりと理解することが大切です。ここでは、代表的な3つをご紹介します。

専門の葬儀社

1つ目は、お葬式に関するサービスの提供を専門とする会社です。このタイプの葬儀社は全国に多数あり、基本的には事前相談から葬儀後のサポートまで自社で一貫して行います。地域密着型の会社から全国展開する大手企業までその規模もさまざまです。なお、最近では葬儀の多様化に伴い特定のスタイルを専門にする葬儀社もあります。家族葬にしたいと事前に決まっている場合は、そういった特化型の葬儀社にお願いしてもよいでしょう。

冠婚葬祭の互助会

2つ目は「互助会」です。正式には「冠婚葬祭互助会」といいます。互助会は加入者が毎月一定の金額を積み立てることで、結婚式やお葬式などに対するサービスが受けられるシステムです。しかし、実際に葬儀を行うときに積立金のみでは費用が足りず、追加の支払いが必要となる場合もあります。なお、実際に葬儀を行う際は互助会の持つ葬儀場やサービスを利用します。最近は家族葬のような小規模な葬儀を希望する方が増えている一方、互助会が保有する葬儀場は一般葬を想定した大きさやプランである場合がほとんどです。互助会は一度入会すると退会に手数料が発生するため、入会前に希望する葬儀ができそうかよく確認するとよいでしょう。

JA・生協

最後は「JA・生協」です。日常生活でよく見るJAや生協も、じつは葬儀事業を取り扱っています。組合に加入すると組合員価格で葬儀に関するサービスが受けられます。受けられるサービスは地域や組合によってさまざまですが、JAは農業従事者の会員が多いため、地域の慣習を考慮した葬儀が行えるという特徴があります。

良心的な葬儀社を選ぶコツ

故人との最後の思い出となるお葬式。そのような大切なセレモニーを任せる葬儀社選びは非常に重要です。しかし、ご遺族の時間的・心理的余裕のなさを利用して会社の利益を優先させようとする葬儀社も、残念ながらないとは言い切れません。ここでは、そのような事態に陥らないために良心的な葬儀社を選ぶコツをご紹介します。

費用を明確に提示してくれる

1つ目は、見積もりのときにプランに含まれているものといないもの、その費用をしっかりと提示する会社であることです。パッケージプランは最低限のサービスのみをセットとし、食事や返礼品などはその基本料金に含まれていないことがほとんどです。含まれていないとはいえ多くの場合は必要となるため、そういった費用も見積もり時に詳しく説明があると誠実な会社だと感じられます。

スタッフの対応が丁寧である

遺族として葬儀を行うことは、人生でそう何度もする経験ではありません。大抵の場合詳しい知識がなく、感情的にも余裕がないことがほとんどです。そのようなご遺族の心情に寄り添い、何がご本人様とご遺族の方にとって最善か、親身になって考えるスタッフがいる葬儀社であれば信頼して葬儀を任せられるといえるでしょう。また、予算によって態度を変えないか、参列者数の予測や割り出しに協力的かなどもスタッフの人柄を測る指標の1つです。

契約のタイミングを待ってくれる

葬儀社に限らずですが、見積もりや相談の際に「この場で申し込むのならお安くしますよ」と値引きを提示してくる会社があります。契約を急がせる強引な態度をみせる会社は避けましょう。そういった葬儀社は説明が不十分だったりその後の対応がよくなかったりする場合も多くみられます。依頼者の疑問点を時間をかけてしっかりと解決する姿勢がみられるところを選びましょう。

支払いの期日や方法に融通が利く

お葬式を行う上で困ることの1つは、「まとまった金額」が「急に」必要となることでしょう。小規模な家族葬でもやはりある程度の額はかかります。昔は葬儀の支払いといえば現金一括が主流でしたが、葬儀社によってはクレジットカードや分割払い、葬儀ローンなど、さまざまな方法を選択できます。選択肢は多いに越したことはありません。また、葬儀前後は慌ただしくなりがちです。それを考慮して支払い期日にゆとりを持たせてくれることも、よい葬儀社であることの条件の1つといってもよいでしょう。

まとめ

コロナ禍も相まってか、比較的小規模である「家族葬」は最近よく選ばれるプランの1つです。人気に伴い家族葬のプランを取り扱う葬儀社もでてきました。しかし、よい葬儀にするためには「比較検討」が大切です。専門だからと即決せずに、何社かで見積もりや相談をしてみることをおすすめします。